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広報おわりあさひにて連載している市長のコラム「足下に泉あり!」を、ホームページでも紹介します!
先月に続き、私の闘病ネタです。日本人が「医の倫理」と問われれば、「医は仁術」という格言が浮かびます。
主治医の先生は、2カ月間の入院期間のほぼ毎日、病室へ顔を出してくださいました。申し訳なくてお聞きすると、患者を心配しながら自宅で休日を過ごすより、10分でも診に出てきた方が、気が楽とのこと。「何年もそうした生活ですら」と、さらっと言われるのですが、何とも正に「仁」ですね。人命の最後のとりでとしての重責を、日々の普通のこととして受け入れておられる矜持に脱帽します。病状回復が実感できない日の「今日は良いですね」、気になる点の質問に「問題ありませんよ」の一言がどれだけ心強かったか。
また、看護師さんたちも想像以上に大変な日常です。特に外科では、術後、患者は体が動かせず、やむを得ず排せつ物などの汚物処理でお世話になります。「遠慮なくいつでも言ってください。誰でも当たり前のことですから」と明るく言われると、「そうだな。仕方ないよな」と、羞恥心を飲み込んで開き直ることができました。
コロナ禍の折、世間は医療従事者の皆さんをエッセンシャルワーカーと呼び、深い敬意を表しました。改めて、平時も変わることのない献身的な姿勢に、感動と共に感謝します。
最後に、江戸時代の医学者・教育者である緒方洪庵の「医戒」を紹介します。
「医師がこの世に存在している意義は、ひとすじに他人のためであり、自分自身のためではない。これが、この業の本旨である。ただおのれをすてて人を救わんことをのみ希うべし」
医療という生業は、時代を超えてかくも崇高なのです。
P.S. 健康診断、できれば人間ドックを受けましょう。技術も薬も日進月歩、現代ではほとんどの病気が治療可能です。ただし、早期の発見が必須条件ですよ。
本市出身イラストレーター「酒井だんごむし」さん作
まずもって、私の長期間の入院により、市民の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます。
直腸がん(ステージ1)のため、昨年12月26日に入院し、翌27日に手術をいたしました。退院予定直前に術後癒着性腸閉塞を発症し、1月14日に早期復帰を目指し手術、その後、同症状の再発により2月5日に再手術を受けました。
結果、2月20日に退院がかない、2月25日に術後初登庁。約2カ月の間に3度の手術を経て、何とか復帰を果すことができました。
実は、昨夏の末ごろから何となく体の変調を感じていたので、10月の人間ドックにある意味期待をしていました。やはりというか、再検査で原因を見つけてもらったということです。「健康都市 尾張旭」の市長が病気ではお恥ずかしいばかりですが、逆にどの首長さんよりも健康のありがたみが身に染みていることで、今後の市政に反映できることも多いように思います。苦しい検査、術後の激痛、つらい治療、山盛りのしんどさを経験するとやはり人生観が変わります。好きなものをおいしく食べられる、ごくごく普通の生活の幸せをかみ締めました。表現が難しいのですが、「日日是好日」、毎日の平穏で健やかな暮らしの大切さを実感したとしか、文字にできません。
そして、多くの人たちに感謝をします。まずは、妻ですね。そして、担当医の先生、看護師さんなど医療スタッフの皆さまの献身的なご尽力に、あらためて御礼を申し上げます。
市政については、職員一同、一致団結して本当によく頑張ってくれました。また、市民の皆さまからは、多くの励ましのお声をいただきました。深く深く感謝いたします。
後遺症による行動制限もあり、順応するために長い時間を要しますが、市長としての役目を果すべく最善を尽くしてまいりますので、温かくお見守りいただければ幸いです。
令和7年が何ごともなく明けました。全ての国民が、初詣では新年の安寧を祈り、安堵もされたはずです。
昨年の元日、能登半島で最大震度7の地震が起こり、9月には、豪雨が同じ被災地をまたしても襲いました。改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された多くの皆さまにお見舞いを申し上げます。
本市では発災直後から、国や県からの要請とは別に、災害協定を結ぶ輪島市に独自支援を行っています。そして9月からは、職員1人の中長期派遣が実現しました。単身赴任ゆえ、ご家族も寂しく思われているはずですが、強い使命感のもと、自ら手を挙げてくれました。誠にうれしく、正に本市が輪島に寄り添う姿の体現者です。
そうした中、10月の市民祭では出張輪島朝市の開催、2日目には和太鼓チームの皆さんも駆けつけてくださいました。メンバー確保にも苦労された中での圧巻の演奏に、観客の誰もが能登の力強い復興を確信しました。私も感動し、年のせいか、涙腺が緩くなったと自覚した次第です。
10月23日、豪雨のお見舞いと派遣職員の激励、そして市民祭の報告に、輪島市長を表敬訪問しました。何度も何度も、本市市民の温かい気持ちに対し、謝意を述べておられました。
ちなみに、偶然この2日前に、旭中学校の福祉委員会の生徒さんたちが輪島市への募金を届けてくれました。やはり、目頭が熱くなります。本市の子どもたちは誠に立派、感心しきりです。未来は明るいですね。
今回の表題は、日本将棋連盟会長の羽生善治さんが平成23年に出版された本の書名です。ちなみに、副題は「自分と闘って負けない心」となっています。ご存じ、羽生さんは、平成8年に当時の将棋界の全7大タイトルを独占された棋界のレジェンドです。
令和6年9月22日、名古屋鉄道が日本将棋連盟と協力して、3月に続く、第2弾「将棋とれいん第二局」イベントが開催され、出席しました。当日は、瀬戸線栄町駅で瀬戸・尾張旭両市の小学生50人を乗せた専用列車が運行され、車内で将棋教室、終点の瀬戸では棋士による指導対局が行われました。この催しに羽生さんも参加され、お話する機会を得て、大感激をいたしました。
さて、「大局観」。よく使われる「大局を見る」と同じ意味ですが、私はこの語を覚えて以来、会社員時代、そして今の立場でも、組織論を語る時、金科玉条のごとく使わせてもらっています。
例えば、役所が新しい課題に対処する時、自分の部署のことだけではなく組織全体として捉え、果たして「是か非か」を判断することが肝要です。さらにもう一歩、大所高所から、地域全体の利益にまで、考えが及べば申し分ありません。
物事を見る時、多角的な視点を常に意識することが大切です。最近は、「虫の目、鳥の目、魚の目」という表現もよく使われます。順に、複眼的に、俯瞰的に、そして流れを見失うなということでしょうか。目指すところは同じです。ただ、言うは易く行うが難しで、私も人に繰り返し説くことで、自分自身に常に言い聞かせてしているようなありさまです。
羽生さんは、本の巻末に次のように書かれています。「人生は突き詰めてはいけないと思う」。時には肩の力を抜く=大局観ですね。